2010年9月24日金曜日

3人の女性ヴァイオリニスト

日は出講日。先ほど帰って参りました。すごく疲れています。昼食はアンパン1個だったのでお腹も空きました。やれやれ。

  一昔は、ヴァイオリニストの世界も、巨匠と言えば殆ど男性でした。シゲティ、シェリンク、ハイフェッツ、オイストラフ、メニューイン、スターン等々。
 しかし、現在では男性と同等、或いは、それ以上に女性のヴァイオリニストが活躍しております。本日はその中から私が最もよく聴き、このブログではお馴染みの3人の女性ヴァイオリニスト、アンネ=ゾフィー・ムタージャニーヌ・ヤンセンヒラリー・ハーンを取り上げてお話ししたいと思います。もちろん、五嶋みどり、諏訪内晶子など、日本人で海外でも活躍されている優れたヴァイオリニストもいらっしゃいますが、それについては後日またお話ししたいと思います。

 まずは、年齢順にムターから始めます。

ムターは1963年生まれ。13歳でカラヤンに見出され、ベルリン・フィルと共演します。これをきっかけに、翌年にはザルツブルグ音楽祭にデヴュー。その後も、国際的ヴァイオリニストとして順調に地位を固めて参ります。指揮者のアンドレ・プレヴィンと結婚致しましたが、現在は離婚しております。レパートリはヴィヴァルディからバルトークなど現代音楽に至る広い範囲をカヴァーしています。弾いているヴァイオリンは1703年と1710年のストラディヴァリです。
 彼女の演奏の特徴はその叙情性にあると思います。技術的に言えば、ヴィブラートの幅が広いのが特徴です。多くの場合、それが美しい響きとなって、素晴らしい演奏となりますが、時として、過剰に感じられることもあります。彼女が演奏する「タイスの瞑想曲」を聴いてみて下さい。



ピッチがずれて聞こえるほどヴィブラートがかかっています。私には、このように、曲によって耳障りに聞こえることもあります。この曲もそうです。好みの問題ではありますけれど。

 ジャニーヌ・ヤンセンは1978年オランダ生まれ。19歳で、ロイヤル・コンツェルトヘボウと共演し、その後も、フィルハーモニア管弦楽団、ベルリンフィル、ウィーンフィルなどと共演し評価を固めて参りました。弾いているヴァイオリンは1727年製のストラディヴァリです。
 
CDデヴューは2003年に録音されたこのアルバムです。
 ヤンセンの特徴はやはりそのパワフルでダイナミックな演奏にあると思います。N響アワーで演奏された、チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」は、弓の切れた毛を振り乱し、そのパワフルぶりを遺憾なく発揮しておりました。しかし、現在、N響アワーでの演奏はNHKからの抗議により、YouTube からは削除されていますので、別の演奏で第3楽章を聴いてみましょう。




 続いては、お馴染みのヒラリー・ハンです。

ハーンは1979年アメリカ生まれ。10歳でカーティス音楽学校に入学し、10代前半からオーケストラとも共演していますが、国際的なデヴューは1995年、ロリン・マゼール/バイエルン放送交響楽団との共演です。弾いているヴァイオリンは1864年製のヴィヨーム。ヴィヨームは一般的にはストラディヴァリのコピーと見なされ、一段低く見られている楽器です。一流のヴァイオリニストとしては使う楽器としては珍しい部類に入るのかも知れませんが、素晴らしい音を出しています。
 ハーンの演奏の特徴は、一つ一つの音の美しさと、理知的とも言うべきその端正さにあると思います。私が初めてハーンの演奏を聴いたのは、彼女のファースト・アルバム「バッハ・シャコンヌ」です。ハーン、17歳の演奏ですが、初めて聴いた時には衝撃を受けました。先日も貼りましたが、パルティータ第2番「アルマンド」をお聴き下さい。



通常よりもかなり遅い演奏ですが、とても素晴らしい演奏だと思います。ある意味で、バッハの演奏としては邪道なのかも知れません。それは、丁度、81年版のグレン・グールド「ゴールドベルグ変奏曲」のアリアの極端に遅い演奏と共通点があるように思います。バッハの時代にはハープシコードが主流であったことを考えれば、55年版の方がよりバッハ的なのかも知れません。しかし、81年版のグールドの演奏には、そのようなことを考える余地も与えぬほどの美しさがあります。私は、ハーンの演奏にもそのような圧倒的な美しさを感じました。
 ハーンにもし弱点があるとすれば、ヤンセンとは対照的に、端正な余り、力強さに欠けると言う点かも知れません。最新のアルバムは、日本では5月にリリースされた「チャイコフスキー・ヴァイオリン協奏曲」です。私はコンサートで生で聴く機会にも恵まれました。端正でとても美しい演奏でとても感動致しましたが、この曲としては弱冠力強さに欠けていると言う感は免れません。彼女はバッハ関係のアルバムを3枚出しておりますが、彼女のバッハは文句なしに素晴らしいと思います。

  所謂、巨匠の演奏を聴くのもいいもので、私も上述したヴァイオリニストのCDは結構持っていて聴いてもおります。でも、現在活躍しているヴァイオリニストの演奏をリアルタイムで聴くのは、それとはまた違った楽しみがあります。コンサートに行く楽しみもありますし、次にどんなアルバムを出し、どのように進化しているのかワクワクしながら待つと言うのもいいものです。
 もちろん、レーピンなど、男性のヴァイオリニストにも素晴らしい方はいるのですが、私はフェミニストなのでどうしても、女性のヴァイオリニストを応援してしまいます。もちろん、素晴らしい演奏を聴かせてくれるからこその話なのですが。皆さんはどのヴァイオリニストがお好きですか?

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