2009年1月21日水曜日

お薦めの本:Y氏の終わり


H氏は職業柄、また趣味で、本を沢山読みます。お薦めの本は腐るほどあるのですが、本日は昨年読んで面白かった本を一冊紹介します。スカーレット・トマスという英国の作家が書いた「Y氏の終わり」という本です。
 トマス・E・ルーマスと言う19世紀の作家に興味を抱く女性の大学院生アリエル(もちろんシェイクスピアの「嵐」 から取った名前でしょう。)がふとしたきっかけで、それを読むと死ぬという幻の書「Y氏の終わり」を手に入れます。その本には、それを飲むと人間の集合意識(?)の世界に入れる薬品の処方が書かれてあり、彼女はその薬を処方し意識の世界へと入っていきます。
 ミステリー仕掛けで書かれており、ストーリー自体かなり面白いのですが、その背景には、ハイゼンベルグの「不確定性原理」など現代の知の最前線が提供する諸問題が隠されています。
 「不確定性原理」は量子を人間が観察すると、その様態に変化をもたらすと言うことを明らかにしましたが、それを敷衍すると、例えば、ビッグバンも人間が観察した結果存在するようになったと推論することも出来る訳です。つまり、人間の思考には世界の有り様を決定するエネルギーがあると言うことになります。
 こんなことを言っても中々分かりにくいかも知れませんが、ともかく、ミステリー仕立てで面白く読める小説であると同時に、現代の知が提起する問題を扱った読み応えのある読み物になっていると言うことです。まあ、騙されたと思って読んでみてください。(読んだ後でも「騙された」と思うかもしれませんが・・・)

0 件のコメント: