2009年2月17日火曜日

村上春樹と「イェルサレム賞」


村上春樹が Jerusalem Prize を受賞したそうです。H氏は昔から村上春樹の小説が結構好きでずっと読んでいます。(最も最近はちょっと停滞気味かなと感じてはいるのですが・・・)特に好きなのは「風の歌を聴け」と「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」です。
 「風の歌を聴け」は村上春樹の出発点とでも言うべき作品で、歴史・意味・人間同士が繋がっていると考えるアナログ的な世界観に対して、世界を、連続性を持たない断片的なものだと考えるディジタルな世界観を示しています。彼が描くのは存在していたものが次の瞬間には失われていまうような ON/OFF の世界です。「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」は、観念的な世界を表す「世界の終わり」と、読者をドライブするハラハラ・ドキドキするようなプロットをもつ「ハードボイルド・ワンダーランド」が交互に描かれますが、観念性と読者を引き込む物語性を持つ彼の小説を象徴するような作品だと言えます。
 彼は今回の受賞を辞退するか否か悩んだようですが、結局受賞の道を選び、授賞式でイスラエルのガザ攻撃を非難するメッセージを発信しました。"If there is a hard, high wall and an egg that breaks against it, no matter how right the wall or how wrong the egg, I will stand on the side of the egg." "Because each of us is an egg, a unique soul enclosed in a fragile egg. Each of us confronting a high wall. The high wall is the system." と彼は述べています。
 ユダヤ人は旧約聖書の時代に故国を追われ、彷徨える民として世界の各地で迫害を受けてきました。イスラエルは第二次世界大戦後、英国などの指示によってユダヤ人の独立国家となりました。ユダヤ人は悲惨な歴史を持つ民族ですが、そのような苦悩を体験した民族だからこそ、イスラエル建国によって土地を奪われたパレスチナ人と共存しようとしないのだろうかと思ってしまいます。
 村上春樹の言葉がイスラエルでどの程度の影響を持ち得るのかは疑問ですが、彼の勇気ある文学者らしいメッセージには敬意を表したいと思います。今日はなかなか真面目なブログでした。

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