本日の昼食は「ローストチキンとトマトのナン(柚子胡椒風味)」と「バターケーキクロワサン」です。
本日はよいお天気になりました。
これは何でしょう?お空が雲一つなく碧く澄み渡っておりましたので思わず携帯電話のカメラで撮って仕舞いました。
村上春樹原作の映画「ノルウェイの森」が間もなく封切られるようですので、音楽のことと絡めながら少しお話ししようと思います。
私が読んだ最初の村上春樹の小説は「風の歌を聴け」です。高校生の頃です。とても優れた小説だと思いました。それ以来村上春樹の小説はほぼ全て読んでおります。然し、最近の作品は余り評価しておりません。私は「1Q84」をご紹介した際、第4巻が出る筈だと申し上げましたが、未だ出る気配がありません。第3巻で完結して仕舞ったのかも知れません。だとすると、私にはこの作品が優れた小説だと評価することはとうてい出来ません。小説はその中に展開される謎が最後に全て解き明かされる必要はありませんが、ある程度の輪郭は示す必要があると思います。「1Q84」では、例えば、ビッグブラザーとは結局何者なのかと言う謎も全く提示されることなく終わっています。これでは何のために提起された謎なのかよく分からなくなって仕舞います。「カフカの海」の結末もそうでした。もしかしたら、村上春樹自身迷路に迷い込んでいるのかも知れません。
私が村上春樹の作品の中で最も好きなのは、処女作の「風の歌を聴け」と「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」です。「風の歌を聴け」では、断片化された現代世界を、巧みな文体を通して見事に表現しています。「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」では「世界の終わり」で描かれる観念的世界と、「ハードボイルド・ワンダーランド」の波乱に富んだ物語が平行して語られています。「世界の終わり」は短編「壁のある街」をもとにして書かれていますが、プロットらしいプロットもなく、短編としては成り立つにしても、長編小説としては極めて読みにくい小説となって仕舞う筈です。それを、「ハードボイルド・ワンダーランド」の読者を先へ先へと読み進めさせる波乱に富んだプロットと平行させることにより、観念性と楽しく読めるプロットの両方を備えた長編に仕立てています。この手法は後の彼の作品でも頻繁に使われるようになります。「1Q84」もそうですね。
「ノルウェイの森」にも、二つの物語が織り込まれています。「直子」のいる山中のサナトリウムと「緑」のいる下界です。「直子」のいる世界は観念的な世界、「緑」のいる世界は日常的な現実の世界と言ってもいいと思います。人は誰しも観念的な部分と日常的な部分を持っていますが、主人公のワタナベ君はこの「観念的世界」と「日常的現実の世界」の間を彷徨います。
これも村上春樹がよく使う手法ですが、ワタナベ君は直子のいるサナトリウムに行く時にトマス・マンの「魔の山」を読んでいます。この小説はとても優れた作品ですが、肺を患ったハンス・カストルプが徴兵忌避の目的もあってスイスのサナトリウムに入るのですが、その閉鎖された特異な空間に魅せられて、中々出て来れなくなると言うお話しです。何気なく出てくる本が、直子のいるサナトリウムの性質と、それとワタナベ君との関係を暗示しているのです。
さて、村上春樹の小説には音楽が巧みに使われています。それは、まるで映画のサウンドトラックのようです。村上は、音楽のタイトルを持ち出すことによって、映画のサウンドトラックのような効果を出そうとしているのだと思います。取り分け、この作品には音楽が巧みに使われているようです。まず、タイトルの「ノルウェイの森」からしてビートルズの曲の名前ですからね。
She showed me her room, isn't it good, norwegian wood?
She asked me to stay and she told me to sit anywhere,
So I looked around and I noticed there wasn't a chair.
I sat on a rug, biding my time, drinking her wine.
We talked until two and then she said, "It's time for bed".
She told me she worked in the morning and started to laugh.
I told her I didn't and crawled off to sleep in the bath.
And when I awoke I was alone, this bird had flown.
So I lit a fire, isn't it good, norwegian wood.
問題ありの歌詞ですね。
昔女の子をひっかけた。いや彼女が僕を引っかけたって言った方がいいのかな。
彼女は僕に部屋を見せて、こう言ったんだ。素敵じゃない?ノルウェイ材の家具なのよ。
彼女は、ゆっくりしていってね。何処に座ってもいいわよと言った。
それで僕は辺りを見回すと、椅子がないのに気付いた。
僕は、敷物の上に座って、ワインを飲みながら機会をうかがった。
僕たちは2時まで話をした。すると彼女がこう言うんだ、「もう寝る時間だわ」って。
彼女は、「明日の朝仕事があるの。」と言って、笑い出した。
僕は「こっちは仕事なんかないよと。」言って、浴室に這って行ってそこで寝ちまった。
そして、眼が覚めると僕はひとりぼっち、鳥はもう飛んで行って仕舞った。
そこで、僕は火を付けた。素敵じゃないかい?ノルウェイ材の家具って。
まあ、こんな所でしょうか?まず、タイトルの 'Norwesian Wood' は「ノルウェイの森」ではなくて、ノルウェイ産の木材で作った家具と言う意味です。因みに、ノルウェイ産の木材は値段が安く、それで作った家具と言うのは安物の家具と言うことになります。 'biding my time' とは、「好機を待つ」と言う意味で、この場合、彼女と寝る機会をうかがうと言う意味になります。最後の 'I lit a fire' は何に火を付けたのか明確ではありませんが、普通に考えれば、そのノルウェイ材の家具に火を付けたと言うことになりますから、彼女と寝られなかった腹いせに家具に気を付けたと言うことになって仕舞います。全然ロマンティックじゃないんですけど!
それはともかく、この作品には数多くの曲が出てきます。一つには、直子と同室の「レイコさん」がピアノを教え、ギターも弾く設定になっているからでもあります。ジャンルも、所謂、フォークソングからクラシック、ジャズ、ロックと多岐にわたります。クラシックの曲としては、バッハ「インヴェンション」、「フーガ」、ブラームス「交響曲第4番」、「ピアノ協奏曲第2番」、ドビュッシー「月の光」、ラヴェル「死せる王女のためのパヴァーヌ」などです。
本日のお昼の音楽はブラームス「交響曲第4番」に致しました。
それでは、第1楽章を這っておきます。
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