お雛様おめでとうございます。(?)今日は1月23日エントリーの「H氏の好きな映画」でも、最も好きな映画の一つとして挙げたエルマンノ・オルミ監督の「木靴の樹」のことをちょっとお話ししましょう。この作品は1978年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドール賞を受賞しました。
この映画はドラマティックな粉飾を一切排し、19世紀末、北イタリア、ベルガモの極貧の小作農の生活を3時間にわたり淡々と綴った映画です。
バティスティー一家は他の数家族と一緒に小作人として働いています。息子ミネクは頭がよく、教区の司祭に小学校に通わせるように奨められ、無理をして通わせることにしますが、ある日ミネクの木靴が割れてしまいます。父親は川縁に生えるポプラの樹を切って、息子に木靴を作ってやります。しかし、樹が切られていることを知った地主は犯人を捜索し、やがてバティスティー一家は樹を切った廉で追放されます。これがこの映画のメイン・ストーリーを成します。
しかし、この映画、ストーリーは余り問題ではありません。夫を失い、近所の人たちの洗濯を請け負い、川で朝から晩まで洗濯をし続ける女性と家計を助けるため粉碾きの職を求める息子。同じ紡績工場で働く男と結婚し、叔母が修道院長を勤める修道院から孤児を貰って来る女性。極貧の中で必死に生きる小作農の生活があくまでも淡々と展開して行きます。
この映画は、贅沢三昧の暮らしを送る地主と極貧の小作農とを対比することによって、痛烈な社会批判になっていると言うのも事実です。しかし、それだけでこの映画を括ることは出来ません。四季の移ろいの中で繰り広げられる貧しい小作農の生活そのものが見るものの心に何かを訴えかけてきます。
H氏は文学も前衛的・実験的な作品を好みますが、映画の趣味に関してもそのような傾向があります。この映画にはそのような所はありませんが、映像によって農民たちの生活を淡々と描写する表現は映画独自のものであり、その意味でこの作品は極めて優れていると言えるのではないでしょうか。是非ごらんになってください。
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