2012年3月8日木曜日

「生チョココロネ」と「絶版」そしてシベリウス「ヴァイオリン協奏曲」

日の昼食は「生チョココロネ」「コロッケバンズ」です。


午前と午後に二つ会議がありました。居眠りはしていません。(凄い!)

 よい本でも(よい本だから?)よく絶版になって仕舞うことがあります。余り読まれなくなって仕舞ったと言うことなのでしょうけれど、何だか納得が行きません。例は色々ありますけれど、本日は福永武彦「死の島」を取り上げてみましょう。


帯には「戦後文学史に輝く、日本文学大賞受賞の巨編」と書いてあります。この本は、高校生の頃、何かで見て興味を持ち買おうとしたところ絶版になっておりましたので、神田の古本屋を回って探し当てたものです。昭和50年初版とありますので、私の生まれる前の本です。上下2巻の結構長い小説です。Amazon で検索してみましたところ、中古が何冊か出ていましたので、今でも手には入るようです。
 なかなか面白く優れた小説だと思います。タイトルは、この小説の主要登場人物である萌木素子が描いた絵「死の島」から取っていますが、もちろんベックリン「死の島」を基にしています。そして実は萌木素子は被爆者であり「死の島」は「広島」ともかけてあります。(これは最後の方で分かるので、これから読まれる方に言って仕舞ってはまずいのですけれど。)


以前にも取り上げたことがございますが、とても有名な絵です。クリックして拡大して見て戴くと分かりますが、中央に立つ樹木は糸杉です。糸杉はヨーロッパの人たちには特殊な意味合いを持ちます。糸杉の名前(学名:Cupressus、英語では Cypress)はギリシャ神話に出てくる「キュパリッソス」から来ています。キュパリッソスのお話しはオヴィディウスの「変身物語」にも出てきます。それによると、キュパリッソスの住むケオース島には金色の角を持つ牡鹿がいて、人々に大切にされており、とりわけキュパリッソスはその牡鹿と仲がよかったのですが、ある時誤って投げ槍でその鹿を殺してしまいます。キュパリッソスは嘆き悲しみ、神アポローンに永遠に嘆き悲しむことを願いました。そこで、アポローンはキュパリッソスを糸杉に変えたと言うことです。それ故、糸杉は死や喪の象徴となり、墓地などによく植えられています。
 この小説はその他ムンクの絵や、シベリウスの音楽への言及もあります。福永武彦のバックグラウンドはフランス文学ですが、モダニズムの影響も色濃く受け「意識の流れ」をはじめ、様々な技法が凝らされています。結末には3つの異なったエンディングが書かれています。何でこんないい小説が絶版になって仕舞うのでしょうね。納得が行きません。

 そう言う訳で(?)本日の音楽はシベリウス「ヴァイオリン協奏曲」に致しました。


本日はヒラリー・ハーンの演奏で第1楽章を貼っておきます。



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