本日は「電気会社と原子力行政」のお話しを致します。
日本の原子力産業は、これまでの記事でも書きましたように、危険性の指摘を無視し、事故があれば隠蔽し、ひたすら安全だと言い張って来ました。例えば、1995年の「高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れによる火災事故の時もそうでした。高速増殖炉とは、高速中性子による核分裂反応を用いた原子炉のことです。軽水炉などで生成されるウラン238とプルトニウム239は廃棄物として処分するしかありませんが、高速増殖炉で燃やすことによって有効利用すると同時に、不要なウラン238からプルトニウム239を作ることによって更に高速増殖炉の燃料を作り出そうとするものです。所謂、核燃料サイクルを実現するための原子炉です。
しかし、その危険性については多くの研究者が指摘して参りました。まず、原子炉内の温度が極めて高くなること、高速中性子によって核反応を起こすため制御が極めて難しくなること、そして、高速増殖炉では1次冷却と2次冷却に金属ナトリウムの溶かしたものを使いますが、ナトリウムは腐食性が強く、圧力容器や配管が腐食し、脆弱になる恐れがあります。また、二次冷却系は水によって熱交換を行いますが、ナトリウムは水と反応すると爆発を起こします。更に、緊急冷却装置も付いていません。
もし、今回のような事故が起きたら、瞬時に臨界に達し大爆発を起こしていたことでしょう。また、二次冷却系が水に接する所では、熱交換を効率的に行うため、配管が曲がりくねっていますが、この部分は軽水炉でも圧力による金属疲労でしばしば破断などの事故が起きています。しかも、高速増殖炉ではナトリウムを使っているため配管の腐食が進み益々壊れやすくなる可能性があります(「もんじゅ」の事故では配管が腐食により1~1.5ミリ薄くなっていることが判明しました)。そして、一度そこで破砕などが起こったら水と反応して大爆発を起こす可能性があります。「もんじゅ」のナトリウム漏れによる火災では、配管のつなぎ目に亀裂が入り、そこからナトリウムが漏れて火災を起こしました。下手をするとナトリウムが床を溶かし、下のコンクリートの水分と反応して爆発を起こす危険性もありました。
この事故の際、公開された事故現場のヴィデオが実は編輯されたものであることがマスコミにより暴露され、それによって渋々公開されたヴィデオも全てではなく、後になってようやくヴィデオの全体が公開されました。最初の、発表では編輯されたヴィデオを基に、事故が如何にも小規模だったように報告されましたが、後にヴィデオの全体が公開されるとそれがもっとずっと大規模な事故であったことが明らかになりました。
記者会見に出席した同時の動燃(現在の「日本原子力開発機構」)の総務部長は記者会見の翌日に自殺しましたが、訴訟を起こした遺族は、虚偽の発表を強いられたためと訴えています。
このような事故を起こした後、「もんじゅ」は流石に運転中止になりましたが、ほとぼりもさめた2010年に性懲りもなくまた運転を再開します。しかし、検知機の誤動作などのトラブルの末、炉内中継装置と言う3.5トンの筒型の装置が原子炉内に落下する事故が起こります。「日本原子力開発機構」は、原子炉に落下による影響はないと発表し、引き上げ作業を開始しますが引き上げることが出来ませんでした。目で確認できないので、正確なことは分かっていませんが、装置の一部が原子炉内の穴に引っかかっていると推測されています。現在、運転を再開することも廃炉にすることも出来ない状態になっています。そして、この事故の際にも現場でこの装置を担当する燃料環境課長が敦賀市の山中で自殺を遂げました。
もともと、多くの研究者が危険性を指摘していたのにもかかわらず、動燃は絶対にナトリウム漏れはあり得ないと言い張っていました。それにも拘わらず事故は起きて仕舞ったのです。
長くなるので、この1例だけにとどめますが、これまで事故の隠蔽やデータの改竄などが繰り返し繰り返し行われてきました。事故の度に改善すると発表されますが、一向に改まる気配はありません。国民は愚かだから少しすれば忘れてしまうだろうと考えているとしか思えません。今回の事故は簡単に忘れられるようなものではありませんが、それでも事故がおさまったらまた同じことを繰り返すのでしょうか?私たちはしっかり見届けなければなりません。
本日のお昼の音楽は小山実稚恵さんの演奏でショパン「ピアノソナタ第3番」を聴いております。
本日はルイサダの演奏で第4楽章を貼っておきます。
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