2009年1月27日火曜日

H氏の好きな推理小説

今日は珍しく少し時間が空いたので、もう一つ書き込みます。H氏は推理小説も読みます。中井英夫の「虚無への供物」、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」、夢野久作の「ドグラ・マグラ」と言ったトラディショナルな推理小説も読んでいます。今日はその中からお薦めの推理小説を紹介いたします。
 まずは写真左のウンベルト・エーコの「薔薇の名前」(国書刊行会、上・下)。英国のタイムズが20世紀の終わりに行った20世紀のベスト100の推理小説部門1位の作品です。エーコは著名な中世学者・記号学者でもあり、また小説家でもあります。この小説は中世の修道院を舞台に繰り広げられる書物を巡る殺人事件を扱っています。こんな面白い本、読んでないと罰が当たりますよ。尚、この小説は、ショーン・コネリー主演で映画化されていて、DVD も販売されています。
 次は日本の推理小説でH氏が好んで読む、笹井潔の「哲学者の密室」。ハイデガーの死の哲学を背景にした中々読み応えのある推理小説です。この小説は、「バイバイ・エンジェル」「サマー・アポカリプス」との3部作になっているので合わせて読まれるといいですよ。
 ロラン・バルトは「S/Z」(写真右)の中で、謎を課しそれを解く機能を持つ単位の総体を「解釈学的コード」と名付けていますが、バルトがこの本で分析しているバルザックの「サラジーヌ」は、通常、推理小説のジャンルには入れられません。謎を課しそれを解いていく機能は、推理小説に限らず、読者を先へと読み進めさせる力になります。例えば、ドストエフスキーの小説にはこの読者をドライブする力が強く働いています。最近新訳で話題になった「カラマゾフの兄弟」を始め、「罪と罰」、「悪霊」、「白痴」、どれを取っても「推理小説」のジャンルに入れてもいい程、この力が強く働いています。そう考えると、ドストエフスキーの小説も、トマス・ピンチョンの「V.」、「競売ナンバー49の叫び」とかもお薦めの推理小説と言っていいのかも知れません。

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